免税事業者のインボイス制度後の納税額をパターン別に少し整理してみる
インボイス制度でよく見かける記事(私も色々自分で整理するのに調べたりしてみた記事)に、
免税事業者が課税事業者になって支払う税金の話が、消費税にしか焦点が当たってないのはどうなんだろう?
と思ったので自分なりに少し整理してみたりしましたので、今回はそのお話です。
注意!
私は税理士でもなければ、税金に詳しいわけでも無い普通の人間なので、正確じゃない情報があるかも知れません。
いくつかの記事や国税庁のサイトなどの情報を自分なりに整理した内容なので、参考程度にお願いします。
インボイス制度とは?
そもそもインボイス制度とは?ですが、これは税理士の方など様々な方が言及しているので、それを読んで貰った方が良いと思います。
ですが、私が国税庁の概要などからの情報を整理した感じでは、
- 「登録番号」と「税率」と「消費税額」が明記された請求書を発行する(これが適格請求書(インボイス)
- 消費税納税額の算出の時に控除するには適格請求書が必要
がポイントと思います。
焦点は免税事業者
正直、今まで納税事業者となっていた所は登録番号を取得して、請求書に載せるくらいで済みます。
(消費税の納税額を計算するときの事務処理は面倒になりますが…)
問題は、免税事業者です。
免税事業者のままでは登録番号を取得できないので、取引先が消費税分を負担するのを嫌がって、収入が減ったり、取引が終了したりします。
(免税事業者であることを理由に取引しないのは違反なのですが、現実はそんなのは関係ないです。
取引しない本当の理由なんて当人しか分からないのですから、適当な理由で中止されます。
(妄想や想像ではなく、実際に見聞きした話))
個人的には、元々消費税込みで支払われている場合は、消費税なしの減額支払いになるのは仕方がないと思っています。
ただ、それはある程度価格交渉ができる場合や、税別・税込が明記されている取引の場合でしょうね。
価格交渉出来ない場合は、消費税込みの金額を売上としてやりくりするしかないので、減額されるとキツイですし、
税別なのか税込なのか明記されていなかったら、いきなり減額される感覚になって辛いですね。
この場合、納税業者となったとしても手元に残る金額は減るので、どちらにしても厳しいです。
※ 消費税込みか別か不明な取引は、主に個人間のやり取りとか細かい取引な感じかな?
(私も消費税の扱いが不明な取引を何回かやった経験があります。)
免税事業者が支払う税金額
前置き的な話は終わりまして、今回のポイントに移りましょう。
じゃあ、実際に納税額ってどう変わるの? のお話です。
まず、計算するために売上などの前提条件を始めに定義します
業種は、あまり経費額が多くないITやクリエイター業で、青色申告済みの個人事業主
売上 : 550万(これが税込なのか税別なのか定かではない、単純に受け取った額)
経費 : 110万(10%税込)
社会保険料 : 上記売上、経費から算出したおおよその金額を反映
(実際には翌年支払う金額を反映させることで、初年の変動を無くす)
計算が面倒になるので、iDeCoとか生命保険とかはやってない
正直、550万の売上があるのはそこそこ恵まれている気がします
細々と頑張っている方だと、もっと売上が低かったり、経費を抑えていたりと色々ありますが、キリの良さでこの金額で計算します
今までの納税額
まず、始めに今までの大まかな納税額を計算しましょう
所得税 : 16.8万 (税率10%)
住民税 : 27.2万 (税率10%)
国民健康保険料 : 45万 (税率11.5% ... 自治体で変わる)
国民年金 : 20万 (固定額)
個人事業税 : 7.5万 (税率5%)
消費税 : 0万
-------------------
納税額 : 116.5万
サラリーマンで言う手取り額相当 : 323.5万
この金額は基礎控除等、国税庁のサイトに載っている計算式で出しています
(私がスプレッドシートで計算式を作って、実際に納税額の確認に使っているので、そこそこ正確です)
東京の一人暮らしだったら、このくらい手取りあれば生活はできるかな?
フリーランスとかだと、仕事がいつ無くなるか不明だったり、退職金が存在しなかったり、基礎年金だけだったりするので、単純にサラリーマンとの比較は難しいですけど…あまり余裕があるとは言えないかも
それにしても、国民健康保険料はダントツで高いなぁ〜
インボイス制度後の納税額
さて、それでは、実際にインボイス制度後の納税額を計算しましょう
インボイス制度後の納税額は、下の様なパターンで変わってきます
それぞれのパターンについては、調べれば色々出てくると思うので、ここでは割愛です。
- 免税業者のまま
- 売上が550万のまま
- 売上が500万に減る(消費税10%が含まれていて、その分カットされた)
- 納税業者になる
- 通常課税
- 簡易課税(みなし仕入率:50%)
- 2割特例
この5パターンで納税額を計算すると、下のようになります
税種 | 売上550万 | 売上500万 | 通常課税 | 簡易課税 | 2割特例 |
---|---|---|---|---|---|
所得税 | 16.8万 | 11.7万 | 13.1万 | 14.4万 | 15.9万 |
住民税 | 27.2万 | 22.2万 | 23.6万 | 25.0万 | 26.3万 |
国民健康保険料 | 45万 | 40万 | 41万 | 43万 | 44万 |
国民年金 | 20万 | 20万 | 20万 | 20万 | 20万 |
個人事業税 | 7.5万 | 5.0万 | 5.5万 | 6.3万 | 7.0万 |
消費税 | 0万 | 0万 | 40万 | 25万 | 10万 |
納税額 | 116.5万 | 98.9万 | 143.2万 | 133.7万 | 123.2万 |
サラリーマンで言う手取り額相当 | 323.5万 | 291.1万 | 296.8万 | 306.3万 | 316.8万 |
現状に対する手取り減額 | ーーー | 32.4万 | 26.7万 | 17.2万 | 6.7万 |
ポイントは一番下の「現状に対する手取り減額」で、実際に支払う消費税より少なくなるんです。
これは、支払った消費税は売上には含まれないので、その分他の税金が少なくなるからですね。
(税込経理と税抜経理で処理の仕方は変わりますが、最終的な結果は同じになります)
よくある記事では、消費税の「40万」「25万」「10万」だけ取り上げていますが、
最終的な納税額増は「27万」「17万」「7万」とおよそ3〜4割くらい抑えられる計算になります。
この部分を明記している記事が無さそうだったので、今回の記事を書いた訳です。
まぁ〜、納税額が増えるのは変わりませんけどね……
(おまけ) インボイス制度の必要性とは…?
始めの方にインボイス制度のポイントで『消費税納税額の算出の時に控除するには適格請求書が必要』と言うのがありましたが、
実際にこれが適用されるのは、消費税を通常課税方式で計算している業者のみだけなんです。
簡易課税方式も2割特例も売上額に対して納税額を計算するので、実際に経費としていくら支払っているかは問われません。
極論で考えたら、簡易課税・2割特例をとっている業者との取引にはインボイス不要、免税業者でも支障なしとなります。
つまり、個人間や小規模やり取りならインボイスは関係ないという話です。(全部ではないでしょうけど)
これって、なんか中途半端ですよね〜
そして、通常課税方式を取っている事業者だったら、今までも適格請求書に近い記述(税率や税額が明記されている)でやり取りしていると思うので、わざわざ事業者登録して番号を取得する必要性が分かりません。
むしろ、請求書フォーマットの確認と番号照合の手間が掛かるだけな気がします。
(インボイスを導入したところで、処理を間違えている事業者は間違えるでしょうし…これでどうやって処理の改善に繋がるのでしょう?)
結局、今までざっくり勘定で納税していた事業者から正確に税金を取る & 免税事業者から取れていなかった消費税分を取れるようにする ってのが本音な気がします。
さいごに
ここまで色々と書いてきましたが、如何だったでしょうか?
色々な用語が出てきたりして、よく分からない所があるかも知れません。(あえて詳しく説明していませんので)
ポイントの『消費税を納税したら他の納税額にも影響するので、消費税の納税額よりトータルでは安くなる』だけ伝わればOKです。
ちなみに、私は免税事業者のままです。
売上1000万なんていかないですし、必要になったら対応すれば良いやのスタンス。
なんか大きな所と仕事の契約するとかあれば、対応するかも知れませんけど……そんな時が来る気はしないですね
インボイス制度が始まって初の確定申告が迫っているので、これから色々出てくるんだろうなぁ〜と思いつつ〆
〜 おわり 〜